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ブルゴーニュへの道(6)
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作ったチーズは半地下のカーブで熟成をさせていた。
大きな鳥かごのような金網の箱の中にチーズを並べ、扇風機で風を送って乾かしていた。
チーズの種類としてはたった1種類しかないが、箱の中にはフレッシュなチーズからかなりセックになったチーズまで様々な熟成状態のものが並んでいて、ここからマルシェなどにいろんな状態のものを持っていくとのこと。
手作り感満載!!

作っているチーズは産地と型の形から「シャロレ」ですか?と聞いてみたが、そうではなくて単なる「シェーブルチーズ」ということで、特に名前があるようなものではないらしい。
形は「クロタン」を意識しているということで、熟成が進んで硬くなっているものはクロタンのような見栄え。

おじいさんたちのご好意で熟成中のチーズを試食させてもらった。
2日目というまだしっとりとして真っ白なフレッシュなチーズをまず試食。
ホエー(乳清)の香りがほんのりとただよい、まだ赤ちゃんのような味。ちっとも山羊乳特有の獣っぽいにおいが立ち上がらなくて甘みが優しいチーズだった。このまま食べるとやや物足りないので、コンフィチュールが欲しいね、なんて言いながら食べた。←もちろん日本語で。

そして次には1週間から2週間近く経ったというチーズを。
こちらはもうフレッシュな感じはなく塩味が際立ってきていたが、ミルクの甘みがきれいに出ていてこちらも日本で食べる時には必ず感じる獣っぽさがほとんど感じられない。どうしてだろう?生産地で食べるシェーブルはまっすぐできれいな味わいがある。

さらに熟成したチーズも食べさせてもらった。クロタンで言えば「ブルー・モワルー」くらいの熟成で、色は純白ではなくて少しアイボリーがかってきていて、身は適当に締まっている。塩がこなれてきてバランスの良い味。ミルクの甘みは影をひそめてしまっていたがその代わりにコクが増して、私は一番この熟成が好きだった。

中山羊おじいさんに「美味しい!」と連発していると、「じゃぁワインでも・・・」と母屋から白ワインと赤ワインを持ってきてくれた。白はアリゴテ、赤はエチケットが付いていない地元の数種類のAOCのブレンドのワイン。こんなにもてなしていただけるとは夢にも思わなかったし、まさに地のチーズ、地のワインをその土地で飲める幸せをかみ締めながらすっかり舞い上がって(いや、酔っ払って?)しまったのだった。

チーズカーブでワインとチーズをしこたまいただいている間に、おじいさんの家には近隣の村からチーズを買いに来る人たちがいた。日曜日ということもあって遠出をしているのか、街や村のフロマジェリーで買うより直接おじいさんのところで買ったほうが美味しいと考えているのかはわからないが、人気は上々なようだ。

この近くにはこのようなチーズ農家はいくつかあるの?とおばあさんに尋ねてみたところ、昔は何軒かあったそうだがEUが統合されて衛生基準が厳しくなってからはほとんどが廃業してしまい(衛生基準に見合うために工房やカーブの改善をする設備投資がたいへんだから)、今では半径25キロ以内では中山羊おじいさんのところだけ、ということだった。おじいさんのところも後継者がいないのでこの代でチーズ作りはお終いだそうだ。
AOCやIGPを持っていなかったり、大手の工場ではない家内工業的な小さな造り手の作る名も無いチーズというのは消えていってしまうご時世なのか。
同じようなことがイタリアのピエモンテ州を訪ねたときにもあったが、スローフード発祥の地のイタリアではそういうチーズも守っていこうという運動が無いわけではなかった。
フランスのブルゴーニュにおいてはどうなんだろう?隠れたシェーブルの産地であるブルゴーニュにはマコネとかシャロレとか有名なシェーブルチーズ(AOC認定を待っている)があるが、その他にも中山羊おじいさんが作るような名も無いチーズを作る工房があるに違いない。
そんな工房が生き残って行くためには、ゆくゆくは工房存続のためにマコネやシャロレなど少しでも名前のあるチーズを作っていかねばならないのだろうか。

空気も時間ものんびりとしすぎているブルゴーニュの片田舎の丘の上で景色を見ながら、そんなことを酔った頭でぼんやりと考えた。
(つづく)


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チーズ | 11:22:43| Trackback(3)| Comments(4)